純粋な信者との接触
純粋な信者との接触
夕暮れが訪れる中、レオンはリュドミラとアリーナの視線を感じつつ、石畳の道を進んだ。彼らは静かな集会場に到着し、穏やかな祈りの声が心地よく耳に届く。内部には、家族を守るために誠実に祈る母親たち、幼い子どもを抱えて微笑む父親たち、そして自分の人生を深く顧みながら感謝を捧げる年老いた者たちがいた。
レオンは、信者たちの純粋さに心を動かされた。月を崇拝する理由が、何も私利私欲や欲望に駆られたものではなく、ただ彼らの生活に溶け込んだ日々の信仰であることが見て取れた。祈りの中にこそ、彼らが支えとしてきたものの重みが宿っている。
「リューダ、どう思う?」と、そっと囁いたレオンの声に、リュドミラはゆっくりと頷いた。「この人たちは何も知らない。ただ、守りたいだけなのよ」と、彼女の声には静かな共感がにじんでいた。
一方、アリーナはその光景を見つめながら、初めての経験に心を揺らしていた。信者たちの無垢な瞳と、純粋な願いを耳にしながら、心が少し重たくなる。「私たちの目的は彼らを敵にすることじゃない……ですよね?」とつぶやく彼女に、レオンは小さく笑みを浮かべた。
「その通りだ、アリーナ。私たちは見極めなければならない。だが、それは誠実な者を傷つけるためではなく、守るためなんだ」
レオンはその言葉を自身にも言い聞かせるように、深く息を吸い込んだ。彼の目の奥には、使命に対する確固たる決意と、その背後に宿る小さな迷いが交錯していた。信仰とは、ただの力ではなく、人々を支える光だ。それを理解した瞬間、レオンの心には新たな覚悟が芽生えていた。
純粋な信者との接触.txt · 最終更新: 2024/11/19 06:40 by webmaster