結婚式当日の祝宴と緊張
クレスウェル邸には華やかな装飾が施され、賑やかな祝宴が始まっていた。天気も晴れ渡り、ゲストたちは笑顔と歓声で祝福の時を楽しんでいる。レオンはカトリーヌを優しく見つめ、彼女の純白のドレスが光を受けて輝く様子に心を奪われていた。
「この瞬間を待ちわびていたんだ、カトリーヌ」とレオンが低い声で囁くと、カトリーヌは微笑みを返し、「私もよ、レオン」と言った。その言葉には、二人が歩んできた数々の困難を超えてきた思いが込められている。
一方で、リディアは祝宴の空気に少しだけ緊張を感じていた。彼女は周囲の笑顔を見渡しつつも、鋭い視線で気配を探っていた。何かが起きる予感は、彼女の胸中をざわつかせていたのだ。
「何か気になるのか?」とマルコムが静かに尋ねる。彼の声には、彼女への信頼と同時にわずかな不安も感じられた。
「大丈夫よ、マルコム。ただ少し、慎重になっているだけ」とリディアは小さく笑みを見せるが、その瞳はどこか鋭さを帯びていた。
式が進行する中、エリーナがリディアに近づき、そっと肩を叩いた。「お姉様、今日はみんなが幸せになる日。何があっても私たちが支えるわ」
リディアは妹の言葉に勇気をもらい、少しだけ肩の力を抜いた。「ありがとう、エリーナ。あなたの存在は私にとって大きな支えよ」
式のハイライトとなる誓いの言葉を交わす場面では、レオンの力強い声が会場に響いた。「この先、どんな困難が待っていても、共に歩むことを誓う。カトリーヌ、君と共に未来を築きたい」
カトリーヌの瞳が潤み、彼女も誓いを返す。「レオン、あなたと共にあることが私の幸せです。共に未来を歩みます」
拍手と歓声が広がる中、リディアの視線が会場の外れで動く影に気づく。胸中に緊張が走り、彼女は素早くマルコムと目を合わせ、わずかに頷いた。
「何かあったら、知らせて」とマルコムが低く言うと、リディアは「分かっているわ」と答え、心の中で家族と仲間を守る覚悟を新たにした。
そのとき、エリオットが会場の端で異変を察し、リディアに視線を送った。二人の間に短いけれど確かな連携が生まれ、守るべきもののためにそれぞれが動き出す瞬間が訪れようとしていた。