聖なる誓いの裏に
リダルダ・カスピアンは、エリディアムの大聖堂の奥深くにある静かな書斎で、手にした羊皮紙を見つめていた。その表情は冷静そのもので、彼の手元にはクレスウェル家の印が刻まれた手紙があった。だが、これは真実ではなく、リダルダが綿密に捏造した偽の証拠だった。
「これでよい」彼は自分に言い聞かせるように呟いた。「神聖な場所を汚す行為を行ったのは、彼ら自身と見せかけることができる。信者たちにとって、神聖な聖堂が冒涜されることは許されないだろう」
リダルダは、自身の計画が完璧に整っていることに満足しつつ、その羊皮紙をカーテル司祭に渡すための準備を進めた。カーテルは信頼できる仲間であり、セヴェルスの指導を受けてクレスウェル家を貶めるための工作に加わっていた。彼がこの偽の証拠を広める役割を果たすのだ。
数日後、日曜日の礼拝が終わると、カーテル司祭は集まった信者たちの前に立ち、その羊皮紙を掲げて大声で語り始めた。「皆様、この聖堂に対して行われた不敬な行為をご存知でしょうか。ここには、その証拠が残されています」彼の声は力強く、信者たちの間にざわめきが広がった。
リダルダは、その光景を遠くから眺めていた。彼は自分が作り上げた偽りが、どのようにして人々の心に浸透していくのかを観察するために、わざと目立たない場所から様子を見守っていた。
カーテルの話が進むにつれ、信者たちの表情には徐々に怒りと驚きが浮かび上がってきた。「クレスウェル家が、こんなことを……」「信じられない!」という声が聞こえる。リダルダは内心でほくそ笑み、計画が順調に進んでいることを確信した。
その後、カーテル司祭はさらに言葉を続けた。「この行為は、神の教えに反するものであり、我々はそれを決して許してはなりません。クレスウェル家に対して厳しい目を向け、彼らが本当に我々の信仰を尊重しているのか、再考する必要があります」
リダルダはカーテルの演説が終わると、人々の怒りが頂点に達しているのを見て満足した表情を浮かべた。彼は静かにその場を立ち去りながら、次の一手を考えていた。「これで、クレスウェル家は信者たちの目から信頼を失う。聖堂に対する冒涜という罪が、彼らの名誉をさらに汚すだろう」
彼の心には、迷いは一切なかった。計画は順調であり、クレスウェル家が追い詰められていく様子を見届けることが彼の使命だった。「セヴェルス様のご意志のもと、我々はクレスウェル家を確実に崩壊させる。そして、その後に訪れるのは、我々にとっての勝利だ」
リダルダはその日の夜、セヴェルスに報告するため大聖堂の奥に向かった。彼の目には冷静さと共に、計画が成功したことへの満足感が滲んでいた。「クレスウェル家に栄光の道は残されていない。彼らが失った信頼を取り戻すことは不可能だ」
大聖堂の扉が閉じ、月明かりがリダルダの後ろ姿を照らした。彼は確かな一歩を踏み出し、次なる段階に進む決意を固めた。