アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチは、黎明の翼の仲間たちと共にフォルティス平原を通過していた。その日は夏の終わり、空は晴れわたり、穏やかな風が草原を吹き抜けていた。彼らはカストゥムへ戻る途中で、物資を補給するため、近くの小さな村に立ち寄ろうとしていた。

その道中、彼らは広大な牧場の前で足を止めた。牧場には多くの家畜が放牧されており、青々とした草原がどこまでも広がっている。ふと遠くに、ひとりの女性が馬に乗って牧場を駆け巡っている姿が目に入った。彼女の名前は、マリアナ・ロマリウス——この牧場の主であり、草原を守る騎士だった。

アレクサンドルが初めて彼女を目にしたのは、彼女が猛然と家畜に襲いかかる狼の群れを追い払おうとしていた時だった。彼女は手際よく馬を操り、鞭を振りかざして狼を遠ざける。しかし、数が多いため、次第に劣勢に立たされ始めた。

「彼女を助ける必要がある！」

アレクサンドルはリディアやエリオットに目配せをし、自ら矢をつがえて狙いを定めた。彼の弓技は名高く、「蒼穹の狼」と呼ばれるほどの腕前を持っていた。空高く弓を引き、放たれた矢は正確に一頭の狼に命中し、群れが一瞬ひるむ。その瞬間を逃さず、マリアナは彼女の剣を抜き、残りの狼を追い払った。

一段落ついた後、彼女はアレクサンドルたちのもとへ馬を駆け寄せた。

「助けてくれて感謝するわ。私はマリアナ・ロマリウス、この牧場の主よ」

アレクサンドルは彼女に軽く一礼し、弓を背に戻す。

「アレクサンドル・ヴァン・エルドリッチだ。ちょうどこの道を通っていただけだが、君の戦いぶりには感心した」

マリアナは微笑を浮かべ、馬から降り立つとアレクサンドルに手を差し出した。「草原の主として、この牧場を守るのが私の務め。君たち、旅の者か？もしよければ、私の牧場に立ち寄っていってくれ。夕方には牧場の人々が感謝の宴を開くだろう」

こうしてアレクサンドルたちは、マリアナの牧場に招かれた。彼らは牧場の豊かな暮らしを知り、マリアナと牧場の人々との強い絆を目の当たりにする。アレクサンドルとマリアナはその夜、月明かりの下で互いの人生について語り合い、次第に深い友情が芽生えていった。