遅れへの焦りとギクシャク
エリオットとエリーナは、アルカナの灯火との接触を目指してエリディアムの街を何日も奔走していた。しかし、どれだけ努力しても有力な情報は見つからず、時間だけが過ぎていく。彼らの焦りは次第に募り、互いの言葉にトゲが生まれ始めていた。
ある夕暮れ、二人は宿に戻る途中で立ち止まった。エリオットが深いため息をつくと、エリーナは苛立ちを隠せず、声を荒げた。
「もう、どうして何も進まないの? 私たち、ただ時間を無駄にしてるんじゃない?」
エリオットは驚いた顔でエリーナを見つめ、反論するように口を開く。「俺だって頑張ってるんだ。だけど、相手は影に潜む集団だ。簡単に見つかるわけないだろう?」
その言葉に、エリーナは思わず歯を食いしばった。普段穏やかな彼女にとって、こうしてエリオットとぶつかるのは初めてのことだった。
「私だって分かってる。でも、焦ってしまうの。父に認めてもらうには、成功させるしかないのに……」
エリオットは一瞬言葉を飲み込み、彼女の焦燥感を理解しようとしたが、疲れた気持ちがそれを邪魔した。「分かってる。でも、無理してもうまくいくとは限らないんだ。焦っても仕方ないこともあるだろ?」
その言葉にエリーナはさらに険しい表情を浮かべた。「それって、諦めろってこと? 私は諦めたくないの!」
二人の間に重い沈黙が訪れた。お互いを思いやる気持ちが行き違い、焦りが二人の絆を試す瞬間だった。しかし、心のどこかで、お互いが決して嫌い合っているわけではないと分かっていた。
エリオットはふと目を逸らし、つぶやいた。「……ごめん。そんなつもりで言ったわけじゃない。でも、俺たち、もう少し冷静に考えるべきかもしれない」
エリーナは涙をこらえながらうなずいた。「私こそ、ごめん。焦ってばかりで、あなたの努力をちゃんと見てなかった……」
二人はぎこちなくも歩み寄り、再び進むべき道を模索する決意を新たにした。焦りとすれ違いに苦しみながらも、彼らは前に進むための絆を取り戻そうとしていた。