闇の中の決断
深夜、アレクサンドルはカストゥムの書斎に立っていた。薄暗い部屋には蝋燭の灯りが揺れ、緊張が漂っていた。彼の眉は深く寄せられ、決意とわずかな不安が表情に滲んでいた。エリオットが隣で書類を整理しながら、静かな声で話しかける。
「リューダは準備できたと言っている。彼女のサイコメトリーが正確なら、連盟の本当の意図を知る手がかりになるはずだ」
アレクサンドルはエリオットに一瞥を送り、口を開いた。「この情報が真実なら、月の信者たちの動向に変化が見えるかもしれない。だが、もし灰燼の連盟が裏で何かを企んでいるとすれば、こちらも慎重に進むべきだ」
数分後、リュドミラが部屋に入ってきた。その瞳には緊張と集中が浮かんでいた。彼女はアレクサンドルの前に立ち、一息をついてから言った。「やってみるわ。ただ、何を感じるか分からないから、心の準備はしておいて」
部屋は静まり返り、リュドミラが目を閉じて集中する。アレクサンドルとエリオットはじっと見守り、彼女の顔に浮かぶ微妙な表情の変化を見逃さないようにしていた。
突然、リュドミラの瞼が震え、苦悶の表情が顔に浮かんだ。「彼らは……批判的だわ。月の信者たちを認めていない。でも、その理由は利益のためじゃない。彼らの目的はもっと複雑……」
アレクサンドルはその言葉に一瞬目を見開き、すぐに落ち着きを取り戻した。「理解した。つまり、彼らと連携を試みる価値はあるということだな」
そのとき、念話でセリーヌ・アルクナスの冷静な声が響いた。「こちらの動きを探るつもりなら、無駄な努力だ。だが、共通の敵がいるなら話は別だ」
部屋に一瞬の静寂が訪れた後、アレクサンドルが返事をした。「互いに警戒するのは当然だ。だが、私たちは今、同じ敵を見据えている。協力する価値はあるだろう」
リュドミラは瞳を開け、少し疲れた表情でアレクサンドルを見た。「彼女も、完全に拒絶しているわけじゃないわ」
アレクサンドルは頷き、部屋に広がる緊張を感じながら、次の一手を決意した。「次は会談の場を設けよう。共闘の可能性を見極めるために」
彼の言葉は、彼自身と仲間たちにとって、新たな挑戦への宣言となった。