出発の前夜
出発の前夜
薄明かりの差し込む作戦室で、リュドミラとエリオットは地図を広げ、慎重に計画の詳細を話し合っていた。エリオットの瞳は鋭く、彼の指が地図上の重要なポイントを正確に指し示す。
「ここが見張りの要所になる。慎重に進めば、気付かれずに拠点周辺を調査できるだろう」とエリオットが低い声で言う。リュドミラは軽く頷き、冷静な視線を彼に返す。「理解したわ。私がサイコメトリーで情報を収集する間、アリーナが念話で全員に連絡を取る手はずね」
そのやり取りを聞きながら、部屋の隅でアリーナは緊張の色を浮かべていた。手のひらがじっとりと汗ばむのを感じながらも、彼女は胸の中で決意を固める。初めての現場――恐怖と期待がない交ぜになる中で、何度も自分に言い聞かせた。「私は仲間たちの役に立つためにここにいるんだ」と。
エリオットが視線をアリーナに向け、穏やかな微笑みを浮かべる。「アリーナ、君の念話が鍵だ。これが君の力を試す場になるが、恐れるな。僕たち全員が君を信じている」
その言葉に、アリーナは少し頬を赤らめながらも深く頷いた。リュドミラが軽く肩を叩く。「私たちがついている。心配しなくていいわ」
静かな夜風が窓を揺らし、遠くで鐘の音が響く中、三人は視線を交わし合い、それぞれの心に覚悟を宿して準備を進めた。
出発の前夜.txt · 最終更新: 2024/11/17 08:36 by webmaster